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公益事業情報

米谷・佐佐木基金

受賞者(研究部門)の挨拶

赤松 隆氏

赤松 隆
東北大学大学院情報科学研究科交通制御学研究室 教授

【 研究題目 】
交通渋滞解消のための優先サービス権付与システムに関する研究

ご紹介いただきました赤松です。最初に、このような立派な賞を創設していただいた皆様に心から感謝いたします。尊敬する米谷先生、佐佐木先生の名前を冠した賞をいただけたというのは、非常に誇らしい感じがして、うれしく思っております。

研究の背景とテーマ
これまでの代表的研究成果

 私の研究成果について少しだけご説明しますと、こちらに申請しましたのはおよそ二つです。一つは、交通ネットワーク統合均衡モデルとよばれる、すべての需要予測をカバーしたネットワーク均衡モデルです。モデルを作るだけならやさしいのですが、大規模ネットワークでの計算をどうしたらいいのかということを考えていたときに、はたと気が付いたのが佐佐木先生のマルコフ連鎖理論を使ったご研究です。1960年代にすでにそういう非常に先駆的な研究をされていまして、そのおかげで、交通ネットワーク均衡モデルとランダム効用理論、エントロピー理論とがうまくつながることを見つけられたということで、非常に印象に残っております。そういう意味で佐佐木先生というのは、個人的には研究面で非常に親近感をもたせて頂いている先生です。
 その後、動的な交通ネットワーク配分理論を手がけたのが、もう一つの研究です。その際に、過去の研究をちゃんとレビューしないといけないということで、いろいろな論文を読んでみました。そうすると、1950年代に「米谷・佐佐木ペーパー」とよばれる非常に有名なペーパーがあって、米谷先生が50年以上も前に国際的に活躍されているということを見て驚いた憶えがあります。それ以来、米谷先生は、私自身の中では、自分を叱咤激励してもらえる先生となっております。そういうこともあって、今回の受賞は非常にうれしく思っております。この賞の場合は、「賞金」ではなくて「奨学金」をいただけるということになっています。現在取り組んでいる、あるいは今後の研究を「ちゃんとやって下さいね」という意味だと思いますので、「ちゃんとやります」という宣言の意味で、現在取り組んでいる研究について簡単に説明させていただきます。

現在取り組んでいる研究

ボトルネック通行権取引制度(2)

 テーマは、ここに書いてございますように、「交通渋滞解消のための"優先サービス権"配分システムに関する研究」です。交通渋滞を解消するためには価格規制すればうまくコントロールできるということを、経済学者の方からよく言われます。ところがエンジニア的に考えると、価格をコントロールしても本当にうまくいくかどうかわからないから、数量規制をすればいいという発想になります。それをうまくハイブリッドにできないか、基本的にはそれに近い発想で考えている研究です。
 中身はおおよそ二つに分かれますが、一つ目は昔からあるランプ制御、これをもう少し高度化できないかということ。もう一つは、「時間帯別ボトルネック通行権取引制度」と名付けているのですが、「特定のボトルネック地点を特定の時間帯に通行できる権利」をうまく配分する仕組みを作ってやれば、交通渋滞も解消するし、経済学者にも文句を言われない、望ましい状態が作れるのじゃないか、そういう制度の提案です。容量以下に需要を抑えれば絶対に渋滞は起こらないから、「ボトルネック通行権」を道路管理者が設定して、その権利をユーザーに配布して需要を割り当ててしまえばいいということです。ただそれだけではある種の予約制で、予約できなかった人は経済的な損失を受けることになってしまうので、新たな取引市場を作ってその権利を交換できるようにしてやる。ボトルネック通行権の設定・配布をしたうえで、さらにユーザーの間でそれを取引できるマーケットを作れば、資源配分の面で最も効率的なパレート最適状態を達成できるのではないかというアイデアになっています。まだ、このアイディアの理論的解析を進めている段階で、より現実的な側面については、いろいろな詰めるべき課題が残っておりますが、鋭意研究を進め、来年度にはその成果をご報告できればと考えております。

 以上、長くなってしまいましたが挨拶に代えさせていただきたいと思います。ありがとうございました。

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