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米谷・佐佐木基金
第15回 米谷・佐佐木基金授賞式
日時:2019年11月29日(金)15:00〜17:00
場所:ホテル日航プリンセス京都 〜ローズ〜(京都市下京区烏丸高辻東入ル)
一、開会の辞↓ | 桑原雅夫 |
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一、選考の経過並びに結果発表↓ | 溝上章志 |
一、受賞者の表彰↓ | 桑原雅夫、佐佐木眞知子 |
一、受賞者(学位論文部門)の挨拶と受賞講演 | 佐津川功季 |
川崎洋輔 | |
一、受賞者(功績部門)の挨拶と受賞講演 | 村田隆裕 |
一、研究報告講演 | 森川高行 |
一、閉会 |
開会の辞
全国的に寒さがたいへん厳しいなか、お集まりいただきありがとうございます。今回で米谷・佐佐木賞も15回を数えることになりました。そのうち最初の10年間が研究部門、そのあと創設された創研部門が5年になります。学位部門は継続して15回ということになって参りました。 学位部門については今回も例年と同じぐらいの応募数がありましたが、とくに今年は激戦になりまして、そのなかから東京大学の佐津川功季さん、東北大学の川崎洋輔さんが選ばれました。 若手のなかでは、この米谷・佐佐木賞の学位部門の賞は、数ある賞のなかでもたいへんに話題になっていることは確かです。それは、受賞者の方々がその後それぞれ目覚ましい活躍をされていることが大きな原因だと思われます。たとえば審査委員の倉内文孝先生は第一回の受賞者で、その後目覚ましいご活躍をされています。受賞者の方々は主に学の世界で中心的に研究と教育に貢献されています。この賞は15年目を迎えてすでに全国的になっておりますが、世界にも知られてきております。 一方、創研部門は5年目になりますが、これまでの研究業績に加えて、これから魅力ある研究、新しいチャレンジを支援するために5年前から創設されたものであります。しかしながら、それまでの研究部門に比べると応募者がやや少ないのが現状です。充分な業績があって、さらに魅力ある研究に挑戦している方々は少なくないと思いますが、この部門の活性化が一つの課題だと考えています。 一度研究部門で受賞された方々が応募を控えられているということが多少あるかもしれません。また、これはオフレコですが、本日は昨年の受賞者の森川高行さんが来ておりますが、審査員のあいだでは「森川さんが、ややハードルを上げてしまったかな」という声も聞かれておりました。 そして功績部門は、交通工学あるいは交通計画の分野で社会貢献された方に授与する賞で、選考委員が選出するものです。今回は、阪神高速の松尾武さん、首都高から日本大学に行かれた森田綽之さんに続きまして、日本交通管理技術協会顧問の村田隆裕さんに授与することが決まりました。おめでとうございます。科学警察研究所にお勤めになっていた時代から、交通工学研究会を通して、研究、教育、そして学界発展にたいへんご尽力されたことを評価しました。 最後にISTTT部門ですが、この授与は昨年行いまして、来年また次を予定しております。 今年も例年通りすばらしい受賞者のみなさまを迎えることができました。米谷・佐佐木賞のいっそうの発展と社会への貢献のためにご臨席のみなさまのご支援をお願いして、開会の挨拶とさせていただきます。 |
選考の経過並びに結果発表
5名の選考委員会を代表して、私から学位論文部門のお二人、功績部門の村田隆裕さまの選考経緯をご紹介します。 学位部門は、今回は6名の応募がございました。いずれも優劣つけがたい、非常に高水準で、私が学位論文を書いていたころとはまったく質も国際性も違うような論文が六つありましたが、そのなかから今回は佐津川功季さまと川崎洋輔さまのお二人を選考させていただきました。 佐津川さまについて先に紹介させていただきます。これは五十音順ではなく応募順ですので、どちらが優劣あるというわけではございません。(笑) 佐津川功季さまは、道路ネットワークの混雑状況と疎通性能とのマクロな関係を説明していますMDFの解析手法を援用して、一対多OD需要を持つような一般的なネットワークでの動的な混雑パターンと疎通能力との関係を分析する手法を開発されました。非常に新規性が高いものです。ローカルな信号制御が、ネットワーク全体にどのような疎通性能の変化を与えるかという影響の分析にも適用されていまして、本手法の交通工学に対する貢献度は非常に高いということで、高い評価を得て今回の受賞の対象とさせていただきました。 二人目の川崎洋輔さまは、従来のセグメント単位の交通状況推定手法をネットワーク全体に拡張されまして、経路選択率と整合的な交通状態とモデルパラメータ、それを同時に更新・推定していくという新しい方法を開発されました。これは現実の道路網上の交通状態推定に適用されますし、交通流理論の研究の発展に大きな貢献をしていると評価されます。さらに、日常的な交通状況の把握に加えて、突発的な事故や災害あるいはイベント、そういう事前には把握が困難な非日常の交通状態推定にも適用できるということで、今日もお見えになっておられます高速道路関係のみなさまには、ぜひこういうものを参考にしていただいて状態推定あるいはコントロールに使っていただくと社会的にも実用的にも有用性が高い研究ではないかと評価して、選考させていただきました。 一方、功績部門は村田隆裕さまに今年は授与することになりました。人づてに私が聞いた村田さまのご経歴と研究内容を紹介させていただきます。 村田さまは1965年に東京大学をご卒業になっておられます。博士課程時代は、景観工学の草分け的存在である鈴木忠義先生、そのあとは中村良夫先生という景観工学を確立されたお二人に学ばれました。そのときに、八十島研におられたにもかかわらず、修士論文から博士論文については、景観工学を取り入れた自動車運転者の注視行動を研究されておられるようです。学位論文名が「自動車運転者の注視対象に対する景観工学的研究」という論文題目になっています。 私は中身を読んでいないのでわからないのですが、今後は高齢者が歩いているときに運転者がどのような見方をするのか、周りの景観との対応など、現在でも重要なテーマについて当初から研究をされていたのではないかと思っていて、一度読んでみたいと思っています。 その後、科学警察研究所時代は、都市景観の観点から見た道路計画や自転車・歩行者に関する研究、人間工学的な研究、高齢者事故、地区交通計画といったことに従事しておられます。交通工学研究会から論文賞を受け、その他にも交通政策研究会の各種プロジェクトに多く従事されるなど交通工学に対しては非常に長くしかも深いご貢献をされてきたということで、これも全会一致で村田さまに今回の功労賞を授与させていただきたいということに決まりました。 先ほど委員長の桑原先生からお話がありましたように、功績部門は数え上げるとたくさんおられますが、誰にしようかというのが非常に悩むところです。優劣のつけ方が難しいのです。一方で学位部門については若い方たちをエンカレッジするということで、できるだけ多くの方に差し上げたいと思っております。来年以降も多くの方に応募いただきたいと思っています。 以上、経過と選考理由を発表させていただきました。どうもありがとうございました。 |
受賞者
学位論文部門
受賞対象 2016年9月から2019年8月に取得した特に優れた学位論文
川崎 洋輔 【 学位論文題目 】 |
功績部門
受賞対象 交通工学・交通計画の分野で、社会貢献された研究者および技術者
研究報告講演
森川 高行 【 研究題目 】 |