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米谷・佐佐木基金

受賞者(研究部門)の挨拶

張 峻屹氏

張 峻屹
広島大学大学院国際協力研究科 准教授

【 研究題目 】
個人間の相互作用を取り入れた生活行動モデルの開発

 広島大学の張でございます。私は1989年に日本にまいりましてそこから研究生活が始まったわけですけども、人間でいうとまだ成人になる前の年にこういう名誉ある賞を頂戴しまして、本当に光栄に思うしだいです。実は当初一人で来ようと思っていたのですが、家内と娘も一緒にまいりました(拍手)。理由は非常に簡単で、家族のこと世帯のことを研究テーマにしているのに連れてこないと多分一生怒られるだろうなと(笑)、世帯の意思決定のプロセスを今回の授賞式でもう一度じっくり考える機会を持つことができましたことにあらためて感謝いたします。簡単にご挨拶をということで、何をやりたいと考えているかについて少しお話しをして、皆様もご一緒に考えていただければと思います。

研究の背景

研究の背景

 

個人間相互作用とソーシャルキャピタル

 

ソーシャルキャピタルの形成と政策的なチャレンジ

 

個人間相互作用と生活の質

(1) 個人間相互作用とソーシャルキャピタル
 人は子供から成長していくにつれて、家族、学校、職場等々、いろんな形で周りの人あるいは組織とかかわっていきます。個人の意思決定についてみると、常に一人で意思決定しているようにみえても、実際は周囲の方々と一緒に行動して意思決定する、あるいは自分が他の方にも影響するし自分の意思決定も他者に影響されています。これを時間軸に沿って書くと図のようになりますが、意思決定における「個人間相互作用」がキーワードになってまいります。

 個人間相互作用とソーシャルキャピタルという議論はけっこうリンクしておりまして、皆様が外出してビジネスしたり遊んだりするということは、結局人間関係を作っていくことに他ならないし、その人間関係が後にリターンとして返って来る、そういう関係にあります。

 

(2) ソーシャルキャピタルの形成と政策的なチャレンジ
 都市計画や交通計画の本来の目的を考えますと、やはり人と人、組織と組織との間のコミュニケーションを円滑にする施策を提案していくこと、同時にそれが「生活の質」の向上につながる施策であること、が重要ではないかと思います。そうした意味で、現在自動車による移動の削減が我々の使命の一つになっていますが、一方で自動車交通を通じて実行されてきたアクティヴィティをとおして形成されてきたソーシャルキャピタルを減らしてはいけない、それを減らさないためにはどんな施策が必要かについて考えていきたいと思っています。

 「生活の質(QOL)」につきましては多くの次元で定義されておりますが、私はこの研究において、特に社会的な側面から、家族関係とか友人関係は今後大きく変化していくと思われるので注目したいと考えております。

目指す交通・都市モデル

交通・都市モデルの欠点

 

目指す交通・都市モデル

 人間生活の基本単位は世帯でありますから、将来の世帯行動の予測が計画立案上重要であることはいうまでもありません。単独世帯の場合は、今までの交通行動モデル(意思決定モデル)をそのまま用いて表現することができますが、複数世帯の場合は構成員間の相互作用を考慮する必要があります。日本の世帯規模の構成も変わってきておりますが、全体の70%を占める複数世帯の意思決定をどのようにしたら表現できるかが、研究をスタートした背景になっています。

 目指す都市・交通モデルを図に示しておりますが、我々都市・交通計画を考える際には、人口と土地利用と環境、交通のことを考える必要があります。これらについて、個人あるいは世帯の意思決定に関わる人と人、人と組織との関係をうまくモデリングしたいと考えています。

研究の今後の方向性

現在取り組んでいる研究のためのツール(1)

 

現在取り組んでいる研究のためのツール(2)

 

現在取り組んでいる研究のためのツール(3)

 

現在取り組んでいる研究のためのデータ

基本的に交通行動分析という一つの流れの中で研究してきましたが、今回の受賞を踏まえまして、他分野の成果も取り入れながらいっそう深めていきたいと考えております。今回の受賞に際して研究の実現可能性が評価の一つの視点になっていたということに関連しまして、今回の研究テーマに使えそうなツールのひとつとして、私が提案した「一般化相対性効用」という新しい効用の概念を使ってうまく(個人間相互作用における)「文脈依存性」を表現したいと考えています。そのほかのツールとして、例えば、今まで集団意志決定理論の中で提案されているモデルをうまく応用するとか、ソーシャルネットワーク理論を用いて、人が他者との関係でどうネットワークを形成し、逆に組織とか団体が人にどう影響を与えるかという視点で研究していきたい思っています。

 データとしては、オランダのHarry Timmerman先生と一緒に共同研究をやっている関係で集めてきたデータとか、我々の研究室が収集したアクテビティ・ダイアリー・データ、あるいは車利用関係のデータ、さらに総務省の社会生活基本調査データ、スイスのMobiDriveという大規模なデータがありますけれども、これらを使ってみたいと思います。できれば新規調査もしたいと考えております。

 どこまで研究を進めていけるか自信はありませんが、くじけずにやっていきたいと思っておりますので、今後ともご指導のほどよろしくお願いいたします。
ご清聴ありがとうございました。

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