人と地域にあたたかい社会システムを求めて


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米谷・佐佐木基金

研究報告講演

森川高行氏

森川高行
名古屋大学 未来社会創造機構 教授 / 名古屋大学COI研究リーダー

【 研究題目 】
ICTを活用した革新的交通システムの提案、需要分析、及び実証実験

はじめに

はじめに

 

 昨年はこの栄えある米谷・佐佐木賞の創研部門をいただきまして、本当にありがとうございます。あらためて御礼申し上げます。この創研部門には、唯一宿題がありまして、1年後に発表して、その後の研究をチェックするということでございます。手綱を引き締めて1年間研究をして参りましたので、その発表をさせていただきます。

モビリティブレンド (Mobility Blend®)

モビリティブレンド

 

 この1年間、Maasという言葉がバズワードになってしまいました。我々は5年ぐらい前から、中山間地域とかオールドニュータウン、地方都市など、とくに高齢者を対象として、トランスポーテーション・プアと言われる人たちに、過疎地で、公共交通も不便なところで、今後のモビリティサービスの提供について検討したときに作ったのがモビリティブレンドという考え方です。

 何をブレンドするかというと、地域には少なくとも既存の交通手段としてはコミュニティバスやタクシーがあります。そこに、それだけでは足りないものについて新規に導入する手段をブレンドして、利便性の向上と選択肢の多様化を図る。新規に導入する手段は、これもいま流行の言葉ですがCASE型の移動です。たとえばライドシェアとか自動運転などを入れていくということです。

 そして、その地域の高齢化・過疎化・運転手不足などの条件に合わせて、CASE型モビリティをどれぐらい入れるかを調整します。既存手段を多めにするか、CASE型を多めにするか、技術や条件が変わることによって、このブレンドの割合を変えていきます。

 このようにCASE型モビリティの導入によってコストを下げて、サービスを向上させるというのも、最近よく言われていることです。イノベーション(Innovation)創出の研究プロジェクトで実施しているのですが、世間一般には「イノベーションはDisruptive(破壊的)でないといけない」ということが言われます。私は必ずしもそうではないと思っています。これまでの既存手段を完全に破壊するのではなく、次第に変えていく。それでも時間がたてば完全に置き換わっていく。こういうDisruptiveではない地域交通システムのイノベーションを実現しようと取り組んでおります。

モビリティブレンドの導入手順と効果

モビリティブレンドの導入手順と効果

 

 モビリティブレンド導入前は、資料の上の図のように、横軸が年齢で、縦軸がそこに住んでいる人、とくに高齢者の健康度だとしますと、年齢が上がるにつれて健康度が下がっていきます。年齢が上がるにつれて、最初はマイカーを運転していたけれども、だんだん運転が不安になってきて、地域にあるコミュニティバスかデマンドバスに乗るようになる。これもだんだん乗れなくなって、タクシーに頼らざるを得ない。そしてそれも乗れなくなると福祉的な移動、介護を伴うような移動になってきます。

 これにモビリティブレンドを入れることによって、たとえばマイカーは早めに運転免許を返納してもらっても、地域のバスを乗りやすくする。タクシーの料金が高いという問題も、たとえば相乗りのタクシーを導入することによってそのバリアを下げる。そして、バスなどが乗れなくなるのはラストマイルの問題があるということで、ラストマイルのサービスを導入する。そして人が介入するようなタクシーは、介添えサービスなどを入れる「ユニバーサルタクシー」と名づけましたが、こういうものを福祉的な移動として同時に提供する。これによって人々の健康寿命を少しでも延ばしていこうという考え方で導入しています。

ゆっくり自動運転®

ゆっくり自動運転

 

 もう一つ、ここで導入する考え方が自動運転です。我々が取り組んでいるものは「ゆっくり自動運転®」という名前を付けています。これは早期の社会実装を目指して、低速度、たとえば時速20キロ以下で特定地域で走行する、人や社会と協調するレベル3またはレベル4の自動運転というものです。

 我々は、SAEの五つのレベルで言うレベル5なんか当面無理だろうと考えていました。どこでもまったく無人で運転する車なんて当分できないということで、レベル5を目指すのではなく、地域限定で速度も落として、社会のために役立つ自動運転を作るべきではなかろうかということで提案したのが、この「ゆっくり自動運転®」です。いまやこの「ゆっくり自動運転®」の考え方は、レベル4の考え方に非常に近くなっています。

 サービスとしては、交通弱者へのサービスや公共交通の補強をメインにするということです。走行性としては、周囲と親和性の高い挙動ということで、たとえば、ゆっくり走るので、後ろに普通の車がついてきたら路肩に寄って後ろの車に抜いてもらうような「後譲り機能」とか、ダイナミックマップの連携、コミュニケーションディスプレイなどを付けていくというものです。

自動運転ソフトウェアの商品化

自動運転ソフトウェアの商品化

 

 「ゆっくり自動運転®」のソフトウェアとして我々が作っているのが、「@AVENU」というソフトウェアです。これは「Advanced Autonomous Vehicle Enabler by Nagoya University」です。これも登録商標を申請中です。先ほど紹介した「モビリティブレンド」は登録商標を取っています。「ゆっくり自動運転®」も取っています。最初は「AVENU」で取ろうとしたら「だめだ」と言われました。「AVENUE」というのが他にカーナビの名前としてあったんですね。そちらは最後に「E」が付いていたので、「私たちはEがない」と言っても「音が一緒だとだめだ」ということで、しようがないので頭にAdvancedを付けて、さらに@を付けたということです。(その後、ADENU(Autonomous Drive Enabler by Nagoya University)で商標登録済み。)

 これは「ゆっくり自動運転®」に応用するだけではなくて、閉鎖環境での物流とか事業所内の、たとえば工場内での自動搬送などにも応用の引き合いがきている状況になっています。

ゆっくり自動運転®車両プラットフォーム#1

ゆっくり自動運転 車両プラットフォーム#1

 

 これは昨年紹介した、一人乗りのEVであるCOMSを改造した「ゆっくりコムス」です。

ゆっくり自動運転®車両プラットフォーム#2

ゆっくり自動運転 車両プラットフォーム#2

 

 それからゴルフカートです。これまでゴルフカートというと電磁誘導で自動運転をしていたのですが、この「ゆっくり自動運転®」の車両は三次元高精度地図とLiDARで自己位置推定をするシステムです。

 ちなみに左側の1号機が2019年の8月26日に事故を起こしました。3か月間の検証を行いまして、昨日、運転実験再開ということになりました。この3か月間はたいへんで、苦労させられましたが、おかげで勉強になりました。

ゆっくり自動運転®車両プラットフォーム#3

ゆっくり自動運転®車両プラットフォーム#3

 

 現在は3号機です。これもいま閉鎖環境内では走っていますが、トヨタのアルファードを改造したもので、もちろん走行性能もいいですし、乗り心地もいいということで、小型バスの代わりになるようなものとして考えています。

ゆっくり自動運転®のこれまでの公道実験

ゆっくり自動運転のこれまでの公道実験

 

 公道実験は2017年、2年ぐらい前から行っています。ここ1年では、ニュータウンでのラストマイル交通ということで2019年の2月、それから都市部での巡回交通ということで2019年のゴールデンウィークに神戸の三ノ宮の港で実験を行いました。資料に写真を掲載していますが、神戸市長と片山さつき地方創生大臣にも乗っていただいています。

中山間地域モデルコミュニティ

中山間地域モデルコミュニティ

 

 モビリティブレンドを展開していく地区としては、高齢化が進む中山間地域で最初に取り組んでおり、豊田市の足助地区と旭地区を最初のモデルコミュニティとしています。資料の航空写真を見ていただければわかりますが、典型的な中山間地域で、高齢化率は40パーセントを超えています。この横展開地区として、さらに奥にある稲武地区で取り組みを行っています。

足助・旭地区におけるモビリティブレンド導入例

ててて?

 

 地区の拠点をモビリティセンター、集落の拠点である集会所などをモビリティスポットと名づけ、住居のレベルでは、独居高齢者がいる場合、見守りサービスをやっています。既存の交通手段としては、地区の拠点からは頻繁に基幹バスが豊田の都心部まで走っています。地区の拠点から集落の拠点まではコミュニティバスが走っています。しかし、足助で言いますと、コミュニティバスは週に1回しかサービスがないということです。地域にはタクシー会社が1社だけあるのですが、タクシーは3台しかありません。

 ここにラストマイルの不足分として、相乗りを入れました。まだ自動運転が社会実装できていないので、「たすけあいカー」と名づけていますが、これはマイカーの相乗りです。それから病院に行くような定型的な移動にも「たすけあいカー」を入れて、タクシーで家から病院まで行くと高いので、タクシー相乗りのシステム「タクシム」というものを入れました。これでモビリティブレンドを一応完成させて、2019年4月から我々の手を離れて、地域の一般社団法人が自分たちの資金だけで運営をしています。このような流れで、一つ社会実装を終わったということになりました。

 地域のシステムとして、タブレット端末を使ってモビリティブレンドを呼び出します。それから、お金のやりとりは現金ではなく、地域ポイントを使っています。ただ、高齢者が高齢者を助ける「たすけあいカー」は完全に安全とは言えません。そこで、すでに中山間地域でラストマイルの実証実験をしていますので、このラストマイルと定型的な移動に「ゆっくり自動運転®」を入れていって、「たすけあいカー」をやがてはなくしていきます。これが自動運転を入れたかたちでの完成形と考えています。

ニュータウンモデルコミュニティ

ニュータウンモデルコミュニティ

 

 次のモデルコミュニティが、高齢化が進むニュータウンです。オールドニュータウンと言われています。我々がターゲットとしているのは、春日井市にある高蔵寺ニュータウンで、1968年に街びらきをしています。日本三大ニュータウンの一つで、人口が減って高齢化率が上がっています。丘陵地を開発しているので坂道が多くて、やはりラストマイル問題が顕著なところです。

高蔵寺NTにおけるモビリティブレンド導入例

高蔵寺NTにおけるモビリティブレンド導入例

 

 ここは珍しいニュータウンで、大きなニュータウンなのに鉄道が来ていなくて、最寄りの鉄道駅はJR中央線の高蔵寺駅です。ニュータウンの拠点と駅とのあいだには頻繁に名鉄バスが走っています。

 地区の拠点がいくつかあって、ここも名鉄バスはわりと頻繁に走っています。それから地元の企業が運行している循環バスがあります。タクシー会社は4社あります。この地区の拠点の周りに住居があるのですが、やはりラストマイル問題があるということです。

 モビリティブレンド的には、2019年1月、2月に実証実験として、まずラストマイルの部分に、先ほどの中山間地域のように、住民のマイカーの相乗りを始めました。2か月間、やってみたのですが、うまくいきませんでした。中山間地域ほど人々のコミュニケーションがなくて、ほとんど需要がなかったという反省があります。

 それからタクシーの相乗りも、2019年1月に実験で入れました。これは事前確定運賃でして、これはわりと使われたのですが、いろいろ不満が出てきました。1日前までの事前確定なので、たとえば「病院に行ったり買い物に行ったりして、帰りの時間がわからないときに帰りの予約ができないじゃないか」といったフィードバックをいただきました。いま実験中ですが、ここは自動運転だろうということで、先ほど紹介した「ゆっくりカート」を使ってラストマイルサービスをしています。

 そして、タクシーの相乗りもリアルタイム・オンデマンドでやって、リアルタイムにマッチングをしてタクシーの相乗りをしていこうというシステムに改造し、実験中です。

やがてはすべて自動運転に

やがてはすべて自動運転に

 

 春日井市役所と長期的な計画を立てているのですが、名鉄バスも運転手さんが不足してきておりますので、全部自動運転にすべく、計画を立てています。やがてこの地域はすべて自動運転になっていくというイメージです。

高蔵寺スマートシティ推進検討会

高蔵寺スマートシティ推進検討会

 

 この取り組みを、国土交通省都市局のスマートシティとして今年度申請したところ、先進15地区の一つに選ばれて、実験中です。

「ゆっくりカート」によるラストマイルサービス実験

「ゆっくりカート」によるラストマイルサービス実験

 

 いま行っている実験ですが、これは「ゆっくりカート」によるラストマイルサービスです。これは高蔵寺ニュータウンの石尾台地区で、だいたい800m四方の丘陵地ですが、図のようにルートを決めて、乗降場をたくさん作りました。「○番の乗降場から○番の乗降場まで行きたいので、何時に来てほしい」と言うと、ルート計算をして迎えに行くという実験を2019年11月に2週間行いました。本当は自動運転で行うはずだったのですが事故があってできなかったので、手動運転で行いました。

 手動運転で運行しながら自動運転のシステムを稼動させて走らせました。これには意味があって、自動運転の再開に対する検証も兼ねまして、自動運転のシステムを稼働させながら実際の運転はドライバーさんがしたということです。これは先週実験が終わっています。

ゆっくりカート実証実験の利用状況

ゆっくりカート実証実験の利用状況

 

 自動運転のカートを手動運転で走らせたのですが、利用回数は2週間ぐらいで101回となっており、それなりによく使っていただきました。

相乗りタクシー実証実験

相乗りタクシー実証実験

 

 相乗りタクシーについては、先ほど言ったようにリアルタイムで相乗りをする、マッチングをするという実証実験をしています。これは長期の実験で、2019年11月から2020年2月まで行います。

オンデマンド型相乗りタクシーサービス

オンデマンド型相乗りタクシーサービス

 

 次は、オンデマンド型相乗りタクシーです。うちの特任准教授で金森亮さんという方がおられますが、彼も取締役をしている「竃「来シェア」という会社で開発しているSAVS(Smart Access Vehicle Service)のシステムを使って、リアルタイム・オンデマンド・マッチングのタクシーサービスを入れています。

事前確定運賃と相乗り割引

事前確定運賃と相乗り割引

 

 これも事前確定運賃の方式で、相乗り割引を入れています。これは地元のタクシー会社とずいぶん交渉しました。一人で乗っても運賃が4〜5割引きになるのですが、2人で乗れば2人分入りますので、通常と同じぐらいの運賃がとれるということです。それによって利用が促進されれば、売上が増えるだろうということでタクシー会社と交渉して、このような運賃制度にしました。

ゆっくり自動運転®の今年度の実験予定

ゆっくり自動運転の今年度の実験予定

 

 ゆっくり自動運転®の今年度の実験予定ですが、昨日、再開が決まりましたので、来週から観光地MaaSの端末交通として、静岡県下田市で、Izukoという東急電鉄とJR東日本が行っている観光MaaSの一環として走らせます。

 それからニュータウンのラストマイル交通ということで、先ほど言いました石尾台、2019年11月には手動で行いましたが、2月には自動運転で走らせます。同じくニュータウンのラストマイル交通ということで、神戸の筑紫が丘のニュータウン内で、自動運転のレベル3で近距離輸送を3月に行う予定になっています。

自動運転車の社会実装に向けて

自動運転車の社会実装に向けて

 

 これまで自動運転車を作るチーム、それから我々のように使うチーム、またテレコミュニケーションを行うチームが一体となって取り組んでいます。また、法律家のチームや社会需要のチームなど、全体が一緒に取り組んでいるのが名大の特徴です。その経験から現在、次のようなことを考えています。

 本当に自動運転車を社会実装していくには、まずは自動運転にこだわらず、地域に必要なモビリティサービスの再構築を行うということです。これは当たり前かもしれません。その一つがモビリティブレンドみたいなことかなと思っています。そのなかで、一部をレベル3で、運転者を入れたかたちでサービスを順次導入するということです。

 レベル3の運行中にもレベル4相当のシステムを稼働させておくわけです。ドライバーの「ここは行くぞ」とか「ここは止まるぞ」という判断と、レベル4のシステムが「ここで行くぞ」という判断は、当面は食い違います。その不一致は、やはりレベル4のシステムがまだまだ人間と違うということを示しています。その不一致点をクリアしていって、全部クリアできれば、それがレベル4ということです。

 ある限られた範囲でのサービス、いわゆるODD(Operational Design Domain)ですが、このODDをきちんと決めることがもっとも大事で、それはサービス欲求によって決まります。ODDを決めてレベル3でやって、レベル4のシステム判断とドライバー判断との不一致点を順次潰していく。それが潰しきればレベル4になるわけです。

 そしてODDを順次拡大していって、すべての状況がカバーできるようなODDになれば、それがレベル5ということです。我々はカーメーカーではありませんので、こういうやり方が社会実装の方法ではないかなと思います。

目指すレベル4サービス

目指すレベル4サービス

 

 我々も最初からレベル4を目指していたのですが、レベル4もなかなか難しいということです。レベル4を目指す者は、まず地域から必要とされるサービスがあって、それによってODDを決めます。もちろん、ODDは現在の自動運転の車両技術によっても決まります。この三つ巴で決めるわけです。

 あとは、自動運転の車両について、地方運輸局がまず保安基準を認定してもらわないといけません。それからODDを誰が認定するかですが、これはまだ決まっていなくて、国でも論議をしています。私たちの考え方は、ODDと自動運転の車両技術、これを同時に認証する組織・制度が必要だということです。これはローカルで決めていくということしかないかなと、全国的な組織で議論しています。

 それから、事故が起こったときの法的責任を明らかにしていくということを我々の法律チームがやっています。

技術発展過程の制約緩和

技術発展過程の制約緩和

 

 ただし、レベル4サービスは、まだハードルが高いのです。そこで、技術発展過程の制約緩和ということで、まずインフラ整備を行います。それから、道交法の特例を作ります。インフラ整備の典型は、信号の情報を無線で渡すとか、一部のところだけ自動運転専用の車線を作っておくといったものです。道交法の特例としては、たとえば自動運転車は二段階右折をしていいといったことです。そのようにしてODDをインフラ側からも少し助けてあげるということです。

 自動運転のレベル4が難しかったら、まずはドライバーによる介入を許してやるということです。結局はレベル3で開始するわけですね。サービスも、あまり高度なものは提供せずに、家の前まで来てもらうのではなくて、5mか10mぐらいは歩いて、乗降場所までは出てきてもらう。家の前まで来てもらうのはちょっと難しいということで、サービスレベルを妥協するわけです。

 このように、それぞれ若干の妥協をしながら、この妥協を少しずつ少なくしていけば、レベル4に達していくだろうと考えています。

 そしてこのODDを拡げていけば、やがてはレベル5に到達するかもしれないということです。

それでも必要な制度再設計

それでも必要な制度再設計

 

 それでも必要な制度設計があると考えています。まず交通事業ですね。料金をいただいて行う事業のときには、現在のガイドラインでは、レベル4の監視者にも二種免許が必要です。これはばかげています。それから、レベル3でドライバーが座っていても、当然、二種免許がいります。これでは自動運転が二種免許のドライバー不足の問題解消に貢献しません。ですから、自動運転の車両の技術とドライバーに必要な技術、この二つのマッチングで二種相当の免許を与えるという、1.5種免許というものが必要です。自動運転の車両は普通の車両よりも安全だということで、少し特別なトレーニング、たとえば事故が起こったときの介護とか処置をトレーニングすることで、一種の免許でも営業運転ができるような、二種免許の規制緩和が必要だと思っています。

 それから、根本的にはジュネーブ条約の「車には運転者が必要」という縛りからの脱却をなんとかしないといけません。

 現在はレベル4の実験は遠隔操作、遠隔監視でやっていますが、遠隔操作は絶対に無理です。5Gが入ったら通信遅延がなくなるというのは嘘で、通信で遅延が起こっているのではなく、画像のコード/エンコードで遅延が起こっているのです。愛知県で行った実験では、5Gを入れても、これまでは1秒の遅延が0.7秒に変わったというぐらいです。0.7秒の遅延では、画像を見て運転はできません。ですから遠隔操作というのは神話みたいなもので、遠隔監視はできますが、遠隔操作は無理です。こんなものを要求していては、いつまでたっても本当のレベル4とかレベル5というのは無理なので、それを要しない制度設計を考えていかなければなりません。この制度設計についても、いま法律チームと一緒になって活動しているところです。

ありがとうございました

 

 最後に、昨年度はすばらしい賞をいただきまして、誠にありがとうございました。

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