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米谷・佐佐木基金

研究報告講演

谷口守氏

谷口 守
筑波大学システム情報系社会工学域 教授

【 研究題目 】
サイバー空間への交通行動分析:〜その都市に及ぶ影響までU〜

 あらためまして、この賞をいただきまして、ありがとうございます。近藤勝直先生、選考委員の先生方、佐佐木綱先生の奥様、システム科学研究所のみなさま、本当にありがとうございます。

はじめに

はじめに

 

 だいたい賞というのは、もらってしまうとそれで終わることが多いのですが、本賞は、1年間勉強しないといけないということでした。それはたいへんありがたいことだったのですが、けっこう悩みました。一応これは2000年ぐらいから研究していたことなので、昨年度発表させていただいたのは15年分ぐらいですが、今年発表する分が1年分では昨年と釣り合いがとれない。かといって同じ話は絶対にしたくないということがあって、いろいろ悩んだのですが、少し昔のデータも掘り起こしながら、違う考え方ができることもあるのでいろいろ取り混ぜて発表させていただきます。

構成

構成

 

 最初に少しだけ復習です。ここだけが昨年と重複します。タイトルだけですと何のことかわからないところもあると思いますが、私の話では難しい数式などはまったく出てきませんので、楽な気持ちで聞いていただければと思います。

【少しだけ復習】 WAY革命

 【少しだけ復習】 WAY革命

 

 最初は復習です。これは昨年も使ったスライドで、「WAY」と付く言葉が、どんどん変わってきているということです。交通分野で重要だったのは、昔はたとえばイギリスだと、物流は運河でやっていた。Water Wayだったわけですが、それが産業革命でRail Wayになって、さらにはMotor Wayに変わるわけです。いまは固定電話がなくてもCyber Wayでいろいろなところにつながってしまうので、交通行動が根本的に変わってしまうのではないかということが──もう実際に変わっていますが、言われているということです。

空間障壁克服のプロセス

空間障壁克服のプロセス

 

 そのなかで、自動車がない時代は徒歩圏でしか移動ができなかったわけですが、それが自動車時代になり自動車交通圏になって、郊外にショッピングセンターができて、都心が寂れてしまう。今、国土交通省などで何か対策ができているかというと、「立地適正化計画をしましょう」、「コンパクトなまちづくりをしましょう」ということで、このスケールで都心と郊外とをうまく調和しようという考え方しか行っていないわけですが、IT時代になってくると、簡単に自動車で行ける範囲を飛び越えてしまって、いろいろなところに交通行動が置き換わってしまうということが起こるわけです。

1世帯当たり1か月間のネットショッピングの支出総額の推移

1世帯当たり1か月間のネットショッピングの支出総額の推移

 

 実際問題として、総務省からネットショッピングのデータを持ってくると、だいたい5年で倍になっているという傾向が出ています。しばらく前、論文を出し始めたころは「取るに足らない問題だ」というコメントが返ってきて論文を落とされたりしていたのですが、最近はさすがにそんなことはなくなりました。かなりの割合がネットにシフトしてきているということです。

実態例:消費者の買い物行動(岡山大学生のケース)

実態例:消費者の買い物行動(岡山大学生のケース)

 

 しかも、それがどこに行っているのかということが大きな疑問です。これは研究をスタートしたころですが、私は前任地として岡山大学にいましたので、私の授業を受けている学生に──何の品物を聞くかというのはポイントになるのですが、「彼女でもいいし家族でもいいので、この前プレゼントを買ったときのことを思い出して、それはどこで買いましたか」と聞きました。

 そうすると、岡山大学の学生なので、だいたい岡山市の中心市街地で買っている。大阪から来ている学生も広島から来ている学生も、まちなかで買っている。彼らをそのままコンピュータ・ルームに連れて行って、同じ物をネットで探して買う寸前で止めさせます。どのようなサイトかという問題ももちろんありますが、そのサイトの所在地を調べると東京が多いですね。関東圏を入れると過半数です。海外に行っている者もいますが、結局は岡山市内に行っている者は一人もいないわけです。行き先がまったく変わってしまうということが起こることになります。

ネットショッピング利用の潜在要因

ネットショッピング利用の潜在要因

 

 実際問題として、ネットでものを買っている人は引きこもりの人なのか。そういうイメージが最初はあって、まちなかに出る人と引きこもりの人とはぜんぜん別なのではないかというかたちで、引きこもりの人をどうしたらいいのかという議論が一時期進みました。しかし実際問題として意識調査をしてみると、じつは、買い物好きな人、活動的な人がむしろネットショッピングをしている。交通行動を見ると、自動車でいろいろなところに行っている人のほうがネットショッピングをしている。元気な人は何をするにしても元気なんですね。どうもそういう構造があるようなことがわかってきた。

 ではそういう人たちを、どうやってもう一度まちのなかに引き戻すのか。たとえばホームページのPRの仕方とか、そういうものを変えたほうがいいんじゃないかということも昨年度お話しさせていただきました。

【O2O分析】

 

 

 ここからはもう少しその先の話で、新しい話になります。  O2O分析というのは何のことか。言葉的にあまり知られていないかもしれませんが、これは「Online to Offline」という英語です。それを省略してこの分野では「O2O」と言っています。Onlineというのはネット上です。2というのは、英語の「to」を数字の2に置き換えただけで、Offlineというのはネットを使わないということですので、ネットにいる人をそうじゃない状況に持ってくるというのが、このO2Oという考え方です。

初期のショップサイト所在地:((例)書籍・雑誌)

初期のショップサイト所在地:((例)書籍・雑誌)

 

 これも初期のデータですが、ショップサイトが立地しだしたときに、日本のなかにオンラインの行き先があるのかについて、追いかけてみました。

 現在はもうやっていないのですが、Googleがホームページに「PageRank」というランキングを付けていました。アクセスされやすいようなところはページランクが高いという評価がされていて、それがショップサイトとしてどこにあるかを追跡できました。たとえば本屋さん、本や雑誌などを買うときのショップサイトは、初期のころどのようなところにあったかというと、資料の赤色のところです。東京周辺に59サイトあったわけです。70パーセントのショップサイトが結局は東京に集中していた。

 北海道は、札幌と旭川にはありますが、広島にはなく、仙台にもなく、東北、四国にもないなど、ものすごく東京一極集中の状況があるわけです。

分析結果(ショップサイト所在地分析:書籍・雑誌)

分析結果(ショップサイト所在地分析:書籍・雑誌)

 

 もう少し詳しく、ミクロに見るとこうなっています。東京でも、千代田区、文京区、新宿区ですね。神田の出版街などにもたくさんサイトがありますが、東京のなかでもそういうところに圧倒的に集中しています。

 一方で、広島にはないのに中国地方の鳥取県の山の中や、大分県の湯布院などにあるのです。これはサイバースペースだけで営業しているようなところがけっこうあるわけです。通常では考えられない僻地にそういうサイトがあったりする。書籍を送付する倉庫だけ持っていたりするのです。ようするに地方都市の普通のまちではなくて、本当に東京の勝ち組か、それか、いままでまちと認識されていないようなところか、どちらかになっているということが一つあります。

利用が減少または利用しなくなった店舗の立地特徴ごとにみた利用当時の買い物頻度(茨城県内居住者対象、複数回答)

利用が減少または利用しなくなった店舗の立地特徴ごとにみた利用当時の買い物頻度(茨城県内居住者対象、複数回答)

 

 実際のまちなかで、どんなところが食われたのか。それも追いかけたほうがいいということで、これは茨城県のネットを使っている人にネット調査をした結果です。「ネットで買ったものは、本来どこで買っていましたか」という質問をしました。すると、大型ショッピングセンターの店舗とか、国道幹線沿いの店で買っていたようなものを買っている。これも最初の予想と違うのは、「中心市街地が衰退している。そういうところのものがネットに行っているんだ」という議論がけっこうありますが、そうではありません。中心市街地で売られているものは競争力がないので、郊外型のショッピングセンターなどで売られているものが、じつはネットと競合していることがわかってきました。

人の動き方も大きく変わった

人の動き方も大きく変わった

 

 これはこの前発表した全国パーソントリップ調査の結果です。そういうことと合わせて、人の動き自体が、それを支えるいろいろな条件が大きく変わってきています。それもセットで考えなくてはいけない。これは男性で地方都市圏に住んでいる人の結果です。全国パーソントリップ調査は昭和62年からずっと継続していて、これは平成27年、最新のデータです。全国の70都市ぐらいのデータ──継続的にとれるのは40都市ぐらいですが、そのごく基本的なパーソントリップの状況を追いかけています。

 太い紫の線が、全交通手段での1日の生成原単位です。見てみますと、かつては若い人がけっこう動いていたのに、20歳代が動かなくなってきている。高齢者がけっこう動くようになってきている。

 さらに、これが衝撃的ですが、自動車によるトリップ生成原単位は、70歳代以上のところはけっこう高くて、30歳代より下は低くなっている。自動車は高齢者の交通手段になっていて、若い人の交通手段ではなくなっている。これは年齢的なものもけっこう効いてきているということが言えます。

タウンコンシャスなネット&ネットコンシャスなタウンの重要性

タウンコンシャスなネット&ネットコンシャスなタウンの重要性

 

 そのようなことを考えて、O2Oとしてどこをどこから持っていくか。じつは「ポケモンGO」というのもO2Oです。ようするに、オンラインでつながったままですが、まちなかに人を連れ出そうとしているということです。

 サイバースペースとリアルスペースとをうまく組み合わせてどうやっていくかということが、やはりこれからは戦略的に求められるということです。

施設・店舗への来訪を促す広報に関するWebアンケート調査

施設・店舗への来訪を促す広報に関するWebアンケート調査

 

 実際に実空間でお店を持っている楽天リサーチの会員の方に、「O2Oとして、ネットで広告して店に実際に来てもらう戦略として、どのような戦略を採っていますか」という調査を行いました。

 どのようなお店に対して調査したかというと、NAVITIMEの検索ホットスポットのランキング上位の集客力のある施設の方にお訊ねしました。どのような理由でお客さんがたくさん来ているかを見ると、けっこう示唆的です。

実空間への来店・来訪を促す施策

実空間への来店・来訪を促す施策

 

 「周辺のイベントの紹介」──周辺のイベントをネットで紹介していたり、日常的にいろいろなことを書き込んでいるところのほうが、お客さんが実空間でも来てくれています。

来店・来訪者の増加要因

来店・来訪者の増加要因

 

 けっこう意外だったのは、床面積が大きいお店やネット上で販売をたくさんしているようなお店のほうが、結局は実空間にもたくさん来てくれるということです。これも、勝っているところは両方で勝っているわけですね。そういう構造が見えてきていると言えます。

【チェックインスポットから都市を見る】 各種SNSの特質と利用状況

各種SNSの特質と利用状況

 

 次が、チェックインスポットから都市を見るということです。チェックインスポットとは何のことか、若い方は知っている人が多いかもわかりませんが、要するにSNSです。SNSの分析もきちんとしてみようということです。さまざまなSNSがありますが、FacebookとTwitterの分析をしています。ユーザーの数が非常に多いものに関して分析をしています。

チェックインスポット(実空間とサイバー空間の交信場所)への着目

チェックインスポット(実空間とサイバー空間の交信場所)への着目

 

 Facebookは全世界のアクティブユーザーが20億人ということです。そのFacebookを利用している人の33.7%がチェックインというものを利用しています。チェックインというのはホテルのチェックインではなくて、まちなかで、ここは気に入ったというところについて、「おれはここに来たぞ」ということをその場所に刻印する行為です。それで「ここがよかった」というようなコメントを投稿します。ということは、そこが実空間とサイバー空間の接点になっているわけです。

 これはけっこうO2O効果があります。チェックイン閲覧者の7割が、チェックインの閲覧がきっかけで、その場所に来ている。ですからネットのつながりで「ここがいいよ」と言われると他の人も来る。人を釣ってしまうんですね。そういう効果があるものです。

使用データ概要

使用データ概要

 

 これも同じく全国PTをしている都市で、Facebookのチェックイン・ランキングの各都市の上位100スポットを実際に見て、2013年と2016年の2時点のデータを比較しています。このデータは累積データなので、最初に誰かがチェックインしたときから、ずっとその数字が増えていきます。ですから2013年のデータはそのとき取っていないともうわからないというものです。2016年は昨年取りました。

札幌におけるチェックインスポット変化の実態

札幌におけるチェックインスポット変化の実態

 

 たとえば札幌市を見ると、黄色いところは札幌市が拠点にしたいと言っている部分で、赤い部分が実際にチェックインされているところです。数を見ると、札幌ドームや大通公園などがチェックインの上位に来ているわけですが、年によって変動もいろいろ見られます。札幌の場合を見ると、チェックインされているところがまちの真ん中にきちんとあるわけです。これはたとえば立地適正化でコンパクトなまちづくりをしましょうと言ったときに、実空間でイメージしているものとサイバー空間でイメージされているものとが、かなり重なってきていると理解できるかと思います。

春日井におけるチェックインスポット変化の実態

春日井におけるチェックインスポット変化の実態

 

 一方で、まったく逆のまちも紹介しておかないといけません。春日井市はこの黄色の部分を拠点としてまちの集積を図るというプランを作るわけですが、それとはぜんぜん関係がないところがチェックインされているという状況になっています。

 もっとチェックイン行為が増えてそこに人がたくさん来るようになった場合に、実空間の交通行動とどのような整合性をとるのかということが一つの課題になります。

チェックインが盛んな都市の把握

チェックインが盛んな都市の把握

 

 2013年と2016年とで、チェックインの比率を見ています。実際に2016年にどれだけチェックインされているかを見ると、右肩上がりの状況になっています。大都市は当然上に来るわけですが、2013年から2016年の3年間だけでチェックインの数が10倍以上増えているものがけっこう多い。だからみんなネット依存のかたちにけっこう来ている。

 あとは、都市圏の規模でかなりパターンが違っています。小さい都市は、顕著にチェックインの数が増えています。安来などは美術館でかなり稼いでいます。政令指定都市などは、チェックインの総数は大きいのですが、急に増えたりはしていません。

チェックインが盛んなスポットの把握

チェックインが盛んなスポットの把握

 

 これは回帰分析をして、何が効いているかを見ています。若年人口比率が高かったり、魅力度が大きい都市は、やはりチェックインが多い。居住者がよく利用するような施設、ようするに広場とか公園、医療施設などには基本的にはチェックインがないわけです。やはり観光施設のチェックインが多い。

実来訪者数に見るチェックインスポットの位置づけ

実来訪者数に見るチェックインスポットの位置づけ

 

 これは学生にしてもらったのですが、チェックインの累積回数と、実際にその実空間に何人来ているかという相関を見ると、やはりある程度の相関関係が見えてきます。松島海岸、磐梯熱海、熊本城、西武ドーム、兼六園など、このような関係になっています。

SNSで情報発信されやすい場所の特徴把握

SNSで情報発信されやすい場所の特徴把握

 

 観光名所だけ見るとこのようになっています。やはり松島海岸、磐梯熱海などは、ゆったりと高齢者が行くところですね。あとは名古屋城、熊本城などのお城やポートタワー、名古屋テレビ塔、千葉ポートタワーなど、ようするにランドマーク的なもののチェックインの数が、相対的に訪れる人よりも多いわけです。ですから、計画的にいいかどうかわかりませんが、目立つものを造るとそこでチェックインしてくれるという傾向があるということになります。

【ツイートが語る都市】 使用データの概要および対象都市

使用データの概要および対象都市1

使用データの概要および対象都市2

 

 ツイートの中身に関しても都市との関係を見られないかということを調べています。Twitterは匿名性がありますので、人間関係を気にしないで書き込めます。あとは拡散性があります。そこで特定の都市名を含むツイートを年月日を指定して検出して、その都市名とどんな言葉がセットで検索されているかを分析しました。

都市によるツイート数の相違

都市によるツイート数の相違

 

 とりあえず、いくつかキャラクターの違う都市について、9月の平日の14時台におけるツイート数を調べました。こちらは対数表示なので、実際にはものすごい差があります。都市によって、ツイートでつぶやかれている数というのは、人口の比などにくらべても大きな差があるわけです。当然、仙台や札幌などの大きい都市はたくさんつぶやかれているわけですが、小国とか新庄などは、この時間帯は誰もじつはつぶやいていない。また、軽井沢などの観光地はけっこうつぶやかれています。場所によってつぶやきの度合いがまったく違うことが見えています。

流動性の構成要素の把握

流動性の構成要素の把握

 

 回帰分析をして、どんなことが影響しているかを見ると、実際にイベントを打つと、すごく顕著に反応するのです。イベントや季節、人口や魅力度などが関係してくることがわかっています。

都市によるツイート内容の相違

都市によるツイート内容の相違

 

 それぞれ同じ時間帯を見ても、まちによってつぶやかれていることはまったく違います。札幌は「ドーム」とか「チケット」、「ラーメン」などがつぶやかれています。堺では市長選があって、「市長」や「維新」という言葉が出ている。相模原はリニアの話があるので「リニア」が上位に出てきている。まったく都市のキャラクターが違うし、やはり流動的な性格が非常に強いということです。

個々のキーワードに見る流動性の内実

個々のキーワードに見る流動性の内実

 

 時間帯や季節などで見ると、札幌がどういうまちなのかというと、「ドーム」や「ツアー」、「ライブ」などがたくさん出てくるわけです。ですから札幌というのはそういうキャラクターなのだと思いますが、もう一つ、たとえば「デリヘル」や「風俗」、「人妻」というものも出てきて、札幌の裏の顔がわかってしまうということがあります。あとは、冬でも夏でも夜になるとラーメンが上位に来ます。

 そう言われればそうかなと思いますが、都市の実際がどうなっているのかを見るときに、みなさんが普通に使っている言葉がけっこう意味を持ってくるというか、真実がわかる情報になっているのだと思います。

都市の序列が変わる

都市の序列が変わる1

都市の序列が変わる2

 

 これまでは距離が障壁だったのですが、ネットになると言語がバリアになるのではないかということで、言語圏ごとにどのような都市が生き残るかについて、これは昔作ったデータですが、実際にページランクの値を見ながら調べたものです。

ショップサイト調査方法

ショップサイト調査方法

 

 69か国のGoogleオンラインショッピングのうち五つの言語について、PageRankの高いショップサイトを探しました。PageRank自体は2016年に廃止されています。

分析結果−フランス語圏

分析結果−フランス語圏

 

 たとえばフランス語を使っているところですと、パリに圧倒的にサイトが集中しているということがあります。

分析結果−英語圏

分析結果−英語圏

 

 英語圏の場合は、インドやカナダ、オーストラリアも英語圏なので、このようなエリアが英語のサイトとしては競争するところになります。人口比で見るとインドが高いわけですが、サイト数割合で見るとアメリカが圧倒的に高いということになります。また、アメリカのなかでもいろいろ偏っています。

分析結果−ドイツ語圏

分析結果−ドイツ語圏

 

 ドイツはすごく均等です。実際の都市の人口規模分布も均等だし、あまりサイトの偏りもないということがあります。

分析結果−スペイン語圏

分析結果−スペイン語圏

 

 スペイン語圏はちょうど独立の話をしていて特徴的ですが、マドリードとバルセロナがやはり強いことがわかります。

分析結果:都市規模構造の比較(1)

分析結果:都市規模構造の比較(1)

 

 ランクサイズルールということで、都市順位と人口の順位をとると、日本は一極集中です。真ん中の線上にのると一般的にランクサイズの順位が均等に下がっていくのですが、下のラインにのると一極集中がすごく進んでいるということです。上のラインにのると分散型です。日本の場合は、人口は東京一極集中と言いながらけっこう均等だけれども、サイトで見ると圧倒的に東京が強いことがわかります。

分析結果:都市規模構造の比較(2)

分析結果:都市規模構造の比較(2)

 

 他の国を見ておくと、アメリカは人口もサイト数も均等ですが、フランスは先ほど言ったように人口よりもかなり一極集中になっています。

分析結果:都市規模構造の比較(3)

分析結果:都市規模構造の比較(3)

 

 ドイツは分散型です。スペインはマドリードとバルセロナだけが強くて、あとはそれほど強くないということがサイト数での傾向です。

考察:言語圏

考察:言語圏

 

 いまの都市の集中や分散の傾向は、ネットの世界になるとより強くなる傾向にある。分散しているところはより分散するし、集中しているところはより集中するという傾向が出てきそうだと思っています。

思い出すこと──曼荼羅とエントロピー

思い出すこと──曼荼羅とエントロピー

 

 みなさんのお手許にない資料が1枚だけあって、これについて最後にお話ししたいと思います。こちらはエントロピーの式で、こちらが曼荼羅です。佐佐木綱先生がエントロピー法をされていたのはよくご存じかと思いますし、私がごいっしょさせていただくようになったころは熊野に連れていっていただいたりして、曼荼羅のお話をだいぶ聞かせていただきました。

さいごに

 

 おそらく1989年の秋だと思いますが、私は助手の1年目で、本当に何を研究していいかよくわからない、そういう時代のことです。佐佐木先生は1931年のお生まれなので、そのときは58歳ぐらいだったと思います。京都大学の研究室はあまりいっしょに飲み会をすることがないのですが、おそらく黒田勝彦先生が発案されて、計画系教員の懇親会の席を設けました。その席で佐佐木先生が言われたことが、私はすごく印象に残っています。

 それは、佐佐木先生よりも少し年上の先生に対して、佐佐木先生がけっこう噛みついたのです。どういうことを噛みつかれたかというと、その年上の先生がエントロピー法的な数学をガンガン使うような研究をされていたことに対して、こういうことを言われたのです。「ある程度の年齢を過ぎたら、研究者としての坂道をどう下るのか、それを考えないといけないでしょう」ということを言われていました。

 考えてみると、私はもう56歳なんですね。このときの佐佐木先生と2歳しか違わないのかと思うと感慨深いものがあります。上がったとはとても思えないのですが、私も下がる準備もしないといけないのかなと思っています。その意味では、この賞をいただいたことを契機に、もう一度創研賞を獲れるぐらいのことを何かしたいなと思っています。そう宣言して自分にプレッシャーをかけて、ちょうど時間ですので発表を終わらせていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

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